ED治療の見通しは明るい

どの程度の治癒が見込めるのか


それぞれの項目でそのつど治療成績について述べてきましたので、あらためて述べる必 要はないかもしれませんが、ここで大まかにまとめてみます。

まず、経口薬のバィアグラは、わが国で発売以後二年八力月経過した時点で五六万四千 人以上の患者に処方され、多くの患者からの治療成績が報告されています。有効率は心因 性EDでは70-80パーセント、器質性EDにも効果があることがわかりました。

年齢が進むほど悪くなることもわかつてきました。このことは神経の変化だけでなく、 加齢による陰茎血管の変化もバィアグラの効果に影響することを示しています。

また、血管拡張薬の陰塞注射療法では70-80パーセントの効果がみられます。この 方法で効果のない患者は陰茎血管系に病的変化があると考えられることから、治療目的だ

けでなく血管系の病的変化の有無を診断する重要な方法としても使用されています。

次に、陰圧式勃起補助具の効果は80パーセント前後と報告されています。ただし、うまく使えず一回試みただけでやめてしまう人がいますので、これらの患者を含めればもう 少し成績が悪くなるかもしれません。これは最初の説明が充分なされていたかにより成績 がまつたく違うというよい例です。

最後にぺニール.プロステ—シスの成績です。手術そのものはうまくいくのですが、満 足しない患者がいるので、満足度でみてみますと、プロステーシスの種類にもよりますが 七〇〜八〇パーセントでした。

以上述べてきましたように、EDの治療成績はきわめて良好です。これから次々に開発 される治療法を加えると、ED治療の将来はたいへん明るいといえるでしよう。

EDの治療は今後どこまで進歩するか

現在期待されている治療法は、EDの遺伝子治療と再生医学のED治療への応用で、一 部実験段階を終わり臨床に応用されはじめています。

遺伝子治療は、すでに実験的には成功しています。陰茎海綿体平滑筋の弛緩は細胞内のイオンの変化によって起こりますので、細胞内のイオンの出し入れをするイオンチャンネ ル遺伝子や神経の刺激を伝える信号物質である一酸化窒素(No)を合成する遺伝子を陰 茎に注入して勃起能力を改善させようとするものです。

陰茎はこの遺伝子治療に適した器官であるといわれています。体の表面に位置している ので遺伝子の注入が容易であること、陰茎が勃起していないときは陰基内の血流がひじよ うにゆるやかなため、必要とあれば根元を駆血できるので遺伝子治療の導入の効率化が図 れること、平滑筋細胞の細胞回転が遅いので一度治療すると効果が持続すること、こうい ったことから遺伝子治療に有利であるわけです。

次に、今目覚ましい発展をしている再生医学はED治療にも応用できます。陰茎海綿体 の再生が試みられていますし、神経の再生はとくに進んでおり、すでに骨盤内臓器の悪性 腫瘍で根治手術をした際切除した神経の再生が臨床的にも試みられています。しかし、そ の成績はかならずしもよくないとの報告もあり、評価が定まるまでには、もう少し時間が 必要のようです。

軟骨は骨と違って吸収されにくいといわれていますが、自分の軟骨を再生すれば、人工 材料に代わってベニール•プロステーシスの素材として使用可能かどうか検討されています。

このように、ED治療法には新しい展開があり、二一世紀中にはEDで悩む人はほとん どいなくなるかもしれません。

急性、再発、慢性化という区分はないEDの分類上、急性、慢性という区分はありませんが、発症が急な場合と、いつから勃起力が低下して性交が不可能になったのかはっきりしない場合があります。

心因性EDなどはある日突然起こることがほとんどですし、外傷などでも受傷したとき から急に起こります。一方、慢性疾患に伴って起こる糖尿病性EDのような場合や、加齢 に伴うEDなどは、発症がいつからかはっきりしないことが多いのです。

また、心因性EDなどでは、一時EDが改善しても再発することがあります。

次に勃起に関与する神経や血管などに病変をきたすような原因疾患がある場合(このよ うに病気に伴ってEDがみられるような場合を症候性EDと呼ぶこともあります)、原因 疾患が治癒しない限りEDは自然に治ることはなく、慢性の経過をたどります。また、心 因性の£Dでも慢性化することがあります。